2008 オックスフォード小林多喜二記念シンポジウム開催報告(その2)

初日の9月16日は、12:00から参加登録の受付を行い、13:30よりPusey Roomで開会式が行われた。総合司会は、島村輝・女子美術大学教授。挨拶は、主催者を代表して山本真樹夫・小樽商科大学学長、佐野力・白樺文学館館長、ホスト校からLinda Floresが行った。

山本真樹夫・小樽商科大学学長は、以下の開会あいさつを行った。

スピーチする山本学長スピーチする山本学長

Good afternoon ladies and gentlemen, My name is MAKIO YAMAMOTO, the President of Otaru University of Commerce.
As one of the alumni of the same school of his, I am delighted and privileged to participate in this Memorial Symposium of one great writer from our university, Kobayashi Takiji.

In recent Japan, the growing diversification in employment systems among the younger generations is in progress. This trend has generated social awareness to reevaluate Kobayashi Takiji and his masterpiece, Kanikosen (Crab-Canning Boat) becoming one of the best-selling books.

It is highly significant for Otaru University of Commerce that this symposium held here in Oxford, is evaluating Takiji and his works in the world perspectives and delivering its feedbacks to the world.

In closing, I would like to express my sincere gratitude to the organizers making this distinguished symposium successful.
Thank you for your attention.

続いて登壇した佐野力・白樺文学館館長は、以下のあいさつを行った。

(1)日本近代文学の中の多喜二文学から、世界の多喜二文学へ

プレゼントの商大創立百年記念切手を紹介する佐野館長プレゼントの
商大創立百年記念切手を
紹介する佐野館長

8年前に、千葉の我孫子市に、私設の白樺文学館を立ち上げました。その時、偶然に、志賀直哉自筆の手紙を古書展で入手しました。これは実は直哉が多喜二に宛てた近代文学史上有名な手紙でした。極めて珍しい、直哉の芸術論が展開されている貴重なものでした。多喜二が謹呈した「蟹工船」については「念入って良く書けている、描写の生々と新しい点感心しました」と褒めています。しかし「主人持ちの小説は、作品として不純になり、芸術としては弱くなる」と評しています。師弟のような関係での温かい励ましを感じます。

2003年11月に多喜二生誕100年・没後70年を記念して、「近代文学と多喜二・多喜二の文学は語りつくされたか」という第1回シンポジュームを東京で開催し、好評を得ました。丁度、次の企画を考える時に、多喜二の1年後輩の伊藤整の言葉を思い出しました。60歳を過ぎて、日本近代文学館館長、日本ペンクラブ会長だったころ、講演に来て「多喜二は29才の若さで、殺されたが、自分は同じ物書きとしては羨ましく思う。多喜二の著作は英語、中国語、ロシア語等に翻訳され世界中で読まれている」と述べています。早速、島村輝先生にお願いして、翌年2004年8月に生誕100年記念多喜二国際シンポジューム・PART2を開催しました。世界6カ国から、2日間で延べ700人が参加し盛況を博しました。2005年11月には、中国・河北大学で、「いま中国によみがえる多喜二の文学」と題して、中国・日本・韓国・米国の人々が集まり、環太平洋のシンポジュームとなりました。多喜二文学は、伊藤整が羨んだとおり、「多国性、国際性」が特徴であることが再度証明されたのでした。

(2)若者(次の時代)の為の多喜二文学

2006年11月、『30分で読める…大学生のための「マンガ蟹工船」』を出版しました。5版を重ねる好売り上げに気を良くして、25歳以下およびネットカフェの人を対象にした「蟹工船」エッセー・コンテストを小樽商科大学との共催で実施しました。多くの応募があり本年2月20日の小樽多喜二祭の日に、小樽商科大学で15人の表彰式を行いました。中・高生2人、中国の学生2人も、実に良く読み込んでいて、審査員を驚かせました。若者が、「社会の変革」をめざし、自分の命を的にした多喜二の文学を読むと言うことは、我々の未来にはまだ希望があると言うことになります。

(3)社会事件としての蟹工船ブーム

5月になって、新聞・テレビ・雑誌がこぞって、新潮社の蟹工船が爆発的に売れていることを報じました。新聞は、文芸欄ではなく、社会面または、3面記事のトップの「事件」として報じたのです。今、世界の強国は、戦争・暴力・貧困を解決するどころか、軍備の拡大、利権のための地域紛争、テロに名を借りた他民族の殺戮に狂奔しています。今回のオックスフォードでの私たちの多喜二研究が、より多くの国でさらに展開されんことを!! 多喜二が願った「世界平和」の実現にむけてさらに前進する力とならんことを!!

[2008/10/9]

白樺文学館 - 小林多喜二の書簡 常時展示中

時代を撃て・多喜二